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Treat Nazis Like You Treat Women

ちょっと前にYouTubeスタンダップコメディを観ていた時に、「Treat Nazis Like You Treat Women」という題されたショーの動画が出てきた。女性を扱うようにナチスを扱えってどういうこと?と思ってクリックして観たら、

今まで観たコメディの中で一番好き…

となったので、備忘録的な感じでブログに書いておきます。

 

www.youtube.com

What a weird time we’re living in. I just hope all the Trump stuff doesn’t make it even harder in the future for men to become president.

なんて変な時代に私たちは生きているんだろう。私はただ、トランプのやらかすあれこれのせいで、男の人が大統領になるのがさらに難しくならないことを願ってる。 

 この最初の10秒で、心つかまれてしまった。

「トランプのやらかすあれこれのせいで、男の人が大統領になるのがこれ以上難しくならないことを願ってる。」って、普通に考えてそんなことありえない。そもそも今までの大統領全員男やん、というのに加えて、トランプがやることがいくらおかしいとしても、誰もそれをトランプは男性だからおかしいからとか、やっぱり男性は大統領には向いていないんだとか思わない。

 

でも、もしトランプが女性だったら?

 

「トランプのやらかすあれこれのせいで、女の人が大統領になるのがさらに難しくなる」

しっくりくるよね。

大きな権力を持つポストにおいて、男性が失敗した時は、「男性だから」失敗したと言われることはほとんどない。しかし反対に、女性が失敗すると「女性だから」失敗したのだとよく言われる。

 

この不当な非対称性があるから、「私はただ、トランプのやらかすあれこれのせいで、男の人が大統領になるのがこれ以上難しくならないことを願ってる」が皮肉になる。

でもここら辺を詳しく説明せず、2文でほのめかす。マジかっこよくね??

 

Aww, poor men. You guys have a rough couple of weeks.

かわいそうな男性たち。今は大変な時だよね。 

 

ここから話はMe Too運動に。 

A lot of my male friends are really nervous in this me too moments so they’re asking me for advice and and I tell them if you’re around a woman and she makes you feel nervous, just picture her clothes. Think of her as your daughter, or better yet, a person.

私の男友達の多くが、Me Too運動の中ですごく緊張して、私にアドバイスを求めてくる。だから私は、「もし女性があなたの周りにいて、あなたが(何か責められることをしてしまうんじゃないかと)緊張するんだったら、彼女の服を想像するといい。彼女をあなたの娘と考えて。もっといい方法としては、彼女を人間だと考えて。」

「彼女の服を想像するといい 」ってこれも何かおかしい。だって大体の場合、特にMe Too運動で吊し上げられるんじゃないかと男性が危惧するような場面では、女性は服を着ているだろうから。

これはつまり、Me Too運動で非難される人、つまりセクハラをする人は、

女性が服を着ている(=目の前にいる男性と性的な関係ではないし、そもそも求めてもいない)にも関わらず、

女性が裸だと思っている(=目の前にいる女性を性的に見てしかもそれを行動に移す)のだ、

ということを言っている(と思う)。

  

「彼女をあなたの娘と考えて。もっといい方法としては、彼女を人間だと考えて。」

というのも、よく言われることだけど、「もっといい方法としては」というのがミソである。

 

女性を自分の娘と仮定して、「娘にそういうことするか?」と考えて、ハラスメントをやめるというのは、簡単だけど結局何も変わってないんだよね。

女性を自分の娘」に置き換えてハラスメントをやめるというのは、それはつまり女性を自分の保護下に置いて、庇護するということであり、女性を対等な存在と思うからハラスメントをしないということとは別物だからだ。

上野先生が東大の祝辞で「『かわいい』とはどんな価値でしょうか?愛される、選ばれる、守ってもらえる価値には、相手を絶対におびやかさないという保証が含まれています。」と言っていたのにちょっとかぶるところがある。

 

まあそれでもハラスメントされるよりはマシなのと、差別思想に浸かってきた人に「同じ人間だと思う」ことは難しいので、「自分の娘」だと思って、というレトリックが使われる。でも別にそれは問題の解決には全然なっていない。(ていうかセクハラしてくる人が、私のことを「自分の娘」と思った結果セクハラをやめたとしても、それもまた無理じゃない?私あなたなんかの娘じゃないんですけどという感じである)

 

服を想像するというのも人間として扱うというのも、人と接する上で当たり前のことで、アドバイスというまでもないから笑いが起きるわけだが、

セクハラで訴えられるのを避けたいならその人として当たり前のことをやりましょう

ということを言っている。

 

Jenaはここから「みんなにとって大変な時代だ」と言いつつ、

Well, except Nazis.

ナチス以外。

と続ける。

 

They’re having a great year. They’re getting a glossy write-ups in the line of New York Times, polling well with Republicans, really just killing it.

彼らはすごく良い1年を過ごしている。ニューヨークタイムズで大きな見出しで報道されたり、共和党員と協力したり、マジでよくやってる。

この場合Nazisというのは、基本的にヒトラーの時代のナチスというよりも、大戦後にナチスの復興を叫ぶネオナチのことを指している。

現代のアメリカではネオナチの拡大が心配されていて、特にトランプ大統領の排外的・差別的発言はネオナチの活動を活性化させているとされて批判されている。最近は白人至上主義者による銃乱射事件も多発しており、(ネオナチと白人至上主義は違うものだけど一つの人種を優遇するという点で思想が似ているので)ネオナチとひっくるめて大きな問題となっている。

そんな感じの文脈で出てきた流れ。

共和党員と協力したり、っていうのは共和党員全員がネオナチと直接的に協力しているというよりも、保守派の政治家とネオナチの思想的親和性を言っているんだと思います。(もしかしたら直接的な協力をほのめかしてるのかもしれないけど、ここはよくわからない。)

 

これらのネオナチに、アメリカはどう立ち向かっていくべきなのだろうか?

Our country is divided now about what to do with this new strain of American taking Nazis. Do we punch them? Do we not punch them? So what do we do?

私たちの国は、ネオナチにどう対処するかで意見が分かれていると思う。彼らを殴るべきなのか?殴らない方がいいのか?どうしたらいいのか?

 

Here’s my advice. If you see Nazis on the streets, don’t punch him. But maybe…lightly harass him. Catcall him. Tell him to smile. If any Nazis  works for you, pay them less. Take credit for their ideas.

もしネオナチを道端で見かけても、殴るべきではない。けど代わりに、軽くハラスメントすると良いかも。キャットコールとか。愛想よくしろとか。もしネオナチがあなたの元で働いたら、給料を少なく払おう。彼らのアイディアを横取りしよう。

これらは確かに、人の希望をくじき、権力から遠ざけるのに有効な手段だ。単純に不当な扱いを受けるだけでなく、それに声を上げようとすると非難を受けたり、給与や名誉が剥奪されるんだから、声を上げる気力もなくなるって想像できる。

 

ただ、ここで「ん?」となったのではないだろうか。

これ、女性がされてることじゃない?

 

You guys see where this is going. If we in America treat Nazis the way we treat women, at the very least, they will never become president.

この話がどこに行っているかわかるよね。私たちは女性を扱うようにネオナチを扱えばいい。そうしたら彼らは少なくとも、大統領にはならないから。

 

 

BURRRRRRN!!!!!!!!!!!!!!