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Crazy Rich Asiansとスタンダップコメディ

Crazy Rich AsiansをNetflixでやっと観ました。

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いろんな人に絶対好きだよと言われてたんだけど、なんやかんやでブームの時は見逃してました。

それで今回Netflixに追加されたので観たのだけれど、色んな人が言っていた通り、アメリカでのアジア系のステレオタイプを金と知性と勢いでドーンと爆破する感じでよかった。

 

色々感想はあるのですが、all-Asian castとかアジア人差別とかは他の人がほとんど言ってくれているような気がするので、

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cinemandrake.com

私はこの映画に出ていた2人のスタンダップコメディアンについて書きます。

 

スタンダップコメディとは?

最近日本の芸人さんでスタンダップコメディがやりたいと言って渡米する人が何人かいるので、スタンダップコメディの名前は知っている人は多いかもしれません。

日本スタンダップコメディ協会によると、

スタンダップコメディとは、演者が一人でマイク一本でステージに立ち、客席に向かってしゃべりかけるスタイルの話芸。笑いの中に社会風刺や皮肉などを織り交ぜながら、様々な事象について語る。欧米やアフリカなど世界中でコメディの主力となっている。

 (引用:https://standupcomedy-japan.com/

ダークな漫談と言うとわかりやすいかも。漫才やコントとは違って、基本的に1人でマイク一本で喋って笑いをとります。

上の説明にもある通り、社会風刺や皮肉も日本の感覚で言うとかなりきついです。政治や人種差別、ジェンダーは当たり前で、植民地支配の話までぶっこむ人もいます。

 

私はこのダークさが本当に好きで、YouTubeでずっとショーを観ている…。そのよく観ているコメディアンのうちの2人が、今回Crazy Rich Asiansに出ていてしかもメッチャ面白かったので、この2人について書きたいなあと思ったわけです。

このクレイジーな男たちを覚えているか?

その2人というのが、↓のサムネに映ってる2人。

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左は役名Bernerd。この動画の通り、海の上で意味わかんないでかくてアホなパーティーをしてた成金です。

右は役名Eddieで、Nickのいとこ。家族写真をひたすら撮らせてて、それが載るのがアメリカではなく香港のVOGUEだと知って怒っていた人www

Bernerdを演じたのは香港出身のJimmy O. Yang、

Eddieを演じたのは中国系マレーシア人のRonny Chieng。

アメリカなどで(めちゃめちゃ)活躍しているスタンダップコメディアンたちです。 

Jimmy O. Yang

Jimmy O. YangははじめNick役のオーディションを受けようとしたらしいのですが、マネージャーに「なんて言ったらいいかわからないけど…プロダクション側はNickのキャストとしては見た目の良い俳優を探してるんだよね…」と言われて諦めた、とインタビューで言っていてめちゃくちゃウケを取っていました。

彼に限らず、スタンダップコメディアンは自分の人種や生まれや英語のアクセント、体型、ジェンダーなどに付随するステレオタイプや不平等を、逆手にとって笑い飛ばすっていうことをよくやるんですよね。私はこれがめちゃめちゃ好きなんです。

 

アメリカにおけるアジア系のイメージとは、「親が厳しくて教育熱心」「数学ができる」「英語にアクセントがある」「運転が下手」などがあり、アジア系のスタンダップコメディアンはここら辺をよくネタにしています。

(数学ができるっていうのは日本とアメリカの教育と比較すればまあわからなくもないが、運転が下手っていうステレオタイプは何がどうなってそうなった感がある)

 

Jimmyは両親が「厳しくて教育熱心」というステレオタイプにまんま当てはまるらしく、自身のショーなどでそれに関してよく話しています。

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I grew up low self-esteem because I was raised by Asian parents. Old Asian people, they are like very honest and they think they're helping you by pointing everything what's wrong with you. I go on my mom's house she says like this with a smile on her face like "Jimmy, why is your face so fat? And your clothes make you look like homeless."

(自分は自尊心が低い、なぜなら欠点をすぐ指摘するアジア人の親に育てられたから。母親は自分に「Jimmy、なんでそんなに顔が丸いの?あとその服だとホームレスみたいに見えるよ」と言ってくる)

 

これ結構リアルじゃないですか?私の母親は私の服について昔よく文句言ってたし、親に「あんた太ったね」と言われたという友達はよく聞きました。特に中高生の頃。

だけどこのショーがめっちゃウケているように、この子供の欠点を正直すぎるくらい本人に言う、というのはアメリカではアジア人家庭の特徴だと思われているらしく。まあ確かにドラマで観た中では白人家庭の母親でこういうこと言う人はあまり見ない気がする…

 

このほかにも「アジア系の親は子供が高学歴の職(医者とか弁護士とか)以外に就くのは認めない」というイメージがあり、これまたそのイメージにぴったり合うお父さんを持つJimmyは、スタンダップコメディアンという自分の職が未だにお父さんに認められていない話をよくしています。

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My dad always said like "Pursing your dreams is how you become homeless"

(父はいつも「自分の夢を追いかけるとホームレスになる」と言っていた)

🤣🤣🤣 

 

最初「アジア系の親は子供が高学歴の職(医者とか弁護士とか)以外に就くのは認めない」というステレオタイプを聞いたとき、私は結構驚いたんですよね。そりゃそういう親はいるだろうけど、そうじゃない親もいる。それって人種によって規定されえなくね?みたいな。

が、少し考えてそれは私がアジアの国でアジア人に囲まれて育ったからだと気づきました。アメリカにおいてアジア人は、移民1世や2世、3世あたりが多いわけです。アジア人に対する露骨な職業差別があったのもそんなに昔の話ではありません。

移民としてアメリカで自分の生活基盤を1から作り上げたり、人種差別によって職業が制限された両親が、子供にはきちんとした教育を受けさせて社会的地位の高い職に就かせることで、子供の人生の質を保障しようとする、というのはなんとなくわかる話だなと思いました。

 

まあそれも全員ではないわけで、「アジア人=子供が高学歴の職以外に就くのを認めない」とイコールで結んでしまうと、それは偏見・ステレオタイプになる。

次で書くRonnyはこれについてジョークを言っていて、スタンダップコメディは同じマイノリティグループでも、ステレオタイプに対する反応が一様でないし、むしろどんどんアップデートされていくのが観ててめっちゃ楽しいです。

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(英語字幕出ます)

 

Ronny Chieng

家族写真をひたすら撮らせるNickのいとこ・Eddieを演じたRonny Chieng。アメリカの大人気のトークショーThe Daily Show」にも出演しています。

 

彼は中国系マレーシア人で、シンガポールで育ち、オーストラリアに10年間住んだあと、今はアメリカで活動しているというコメディアンです。

つまり彼は、アメリカでは完全に外国人なんですよね。なので(Jimmy以上に)アジア系アメリカ人というよりアジア人側の視点に立ったショーが多くて、私は笑いつつも「ああ〜〜!」となる点が多くてとてもおもしろい。

 

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I don't know what it is like to be a minority Asian because I came from Asia. All Asians over there. I encountered Asian stereotypes for the first time when I moved to America. No idea why people were saying shit about us. No idea you guys are talking shit behind our backs.

Like all Asian people are good at math? I didn't know that. In Asia we all are good at math. I didn't know that was a skill-set. I didn't know square rooting 7 was difficult. I just did it. …Did it again in my head. For fun.

アメリカに来るまで、アジア系のステレオタイプというものを知らなかった。アジアにはアジア人しかいないから。

例えばアジア人は数学が得意?知らなかった。アジアではみんな数学が得意だから。数学をやるのに特別な才能が必要だなんて知らなかった。7の平方根を出すのが難しいなんて知らなかった。(指を鳴らす)今頭の中でやった。(また指を鳴らす)また頭の中でやったけど。)

どこから冗談でどこから本気なのかわからないのがウケるけど、「I don't know what it is like to be a minority Asian because I came from Asia」というのはアジアで育ったアジア人あるあるなのではないでしょうか。Crazy Rich Asiansの邦題が「クレイジーリッチ」なのもわかるよね。アメリカでは「Asians」こそが大事なのですが、アジアでは「アジア人ということで軽視され、ステレオタイプを押し付けられる」体験が理解しにくいのです。私は理解しにくいという感覚はわかるけど、Asiansを削るのはあまりにも映画の意義を踏みにじっていると思うので批判派ですが。

 

ここまで人種差別に関するショーばかり取り上げてきましたが、全てがそうなわけではありません。例えばこれは、みんなで食事に行こうと言った時に「I'm okay with anything (なんでもいいよ)」と言う人がムカつくという話ww

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I'm okay with anything. Anything. ANYTHING?! Diarrhea. Are you okay with diarrhea? No? Okay you're not okay with diarrhea. Genocide? No, so there're two things you're not okay with right there.

(diarrhea = 下痢、genocide = 大量虐殺)

めちゃウケるけどめちゃくちゃわかる。みんなで集まろ〜!旅行行こ〜!ご飯いこ〜!とか言うくせに何もしないやつまじでうざいよな!!!みんなでご飯行こって言うからライングループ作ったのに、どこ行きたい的なこと言うと特に意見を出さないやつ、もうバイバイってなるよね。私はそれがいやで大人数で遊ぼうと言うのは自分が全てアレンジしても良いと思える集団の時しか言わなくなった。そして友達が減った 

 

こんな感じで、Crazy Rich Asiansに特にクレイジーな役で出演していた2人はまじのコメディアンたちなんです。私はすごい好き!