ラーメンとミュージカル

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上海で考えたこと

2月の初めから中国上海に来ている。2ヶ月近く滞在する中で考えたことを書き残しておく。

 

「魔都」上海

まず、上海は夜が楽しい。

 

おしゃれなバーがたくさんあって、クラブ文化も盛ん。終電はアホかってくらい早いけど、タクシーがめちゃくちゃ安いのでタクシーを乗り回して遊べる。

何より、夜の街灯が美しい。オレンジ色と黄色の中間みたいな色で街灯が統一されていて、その色に照らされた上海の町並みは見ていて惚れ惚れする。

上海の町並みは、都市計画とか建築はまったくわからない私が見ても面白くて、ヨーロッパ風の建物が多く残っている地区では、フランス風の建物の窓から、住人の洗濯した下着が無造作にぶら下がっていたりする。

私が住んでいる地区は、社会主義感がすごい無機質なアパートが並んでいて、道路は日本に比べたら綺麗とは言えないし、何してるかよくわかんない人も結構いる。ハリウッド映画で見る「中国」みたいな。

 

そういう「アジア感」がすごい風景が、ジャズが似合うオレンジ色の街灯に照らされる風景は、なんとも魅力的だ。

というか、魅力的だどころではなくて、この風景は私の心をマジでブチ抜いた。アジアとヨーロッパが混ざりあう(融合ではない)中に、アジアの生命力を感じるみたいな感じ?

たぶん街灯の色は別に上海特有のものではないだろうし、バーやクラブはたくさんあると言えどそれは東京も同じかそれ以上にあるのだが、

この「アジア」「ヨーロッパ」を意識させられる美しさっていうのは、東京では見つけにくい気がする。他の中国の都市ではあるのかも。

 

昔中国が欧米列強に分割されていた頃、上海はその魅力ゆえ「魔都」と呼ばれていた。

らしいんだけど、すっごくわかる。花の都でも、美の都でもなく、魔都というのがしっくりくる。

 

上海で会った人たち

私は上海に友達がいなかったので、誰かと知り合おうと色んなところに出かけていて、結構色んな人に会った。

 

中国語ができないので英語でコミュニケーションできる人限定だが、それでも何人かの中国人と知り合った。

みんな上海以外の都市出身の子たちで、私は中国の他の地域のことを知りたくて、その子達の出身地について色々(といっても気候とか簡単なこと)聞いていたのだが、帰ってくる答えが本当にてんでバラバラで面白かった。方言もまるで違うしね。

上海に対する感想もみんなバラバラで、深センから来た子は上海は寒すぎるとずっと文句を言っていたけど、成都出身の子は上海はとにかく広くて夜遊びが最高に楽しいと言いながら男と消えていった。

 

あと、上海で会った欧米人たちは、なんかよくわかんない人達が多かった。これは全体的な傾向というわけではなく、私が会った欧米人たちは仕事場で話した数人以外はバーとかクラブとかで会った人が多いからだと思う。彼らがなんの仕事をしているのか未だによく理解していない。

 

その中でも特に中国に3年いるブラジル人と仲良くなったのだが、彼の中国観はけっこう面白かった。

彼にとって中国は「ルールがシンプルで、それさえ守れば問題ない」国らしい。泥棒はダメ、殺人もダメ、政府をオープンに批判するのもダメ、というルールさえ守れば、死ぬことはない。ルールを守っても殺される可能性があるブラジルは違う。と彼は言っていた。

やたら私に中国語をやれと何度も言ってくるところとか(やっとるわ)、西欧批判を繰り返すところ(同じ話を何回もするな)はうざかったけど、日本で生まれ育った私とはかなり異なった見方で中国を見てるのがわかって話してて面白かった。

 

色んな人に会ったと言いつつ、結局私は中国語が話せないので、見える世界は限定的なことはわかっている。これから中国語が上達するにつれて、中国への印象は変化するだろうし、その変化を自分の体で体験できるのが楽しみ。

 

英語が通じない

言語の話で思い出したけど、上海、英語はほとんど通じない。東京と同じくらい通じない。

なので、私は翻訳アプリとジェスチャーを駆使して毎日生きている…もう慣れたけど、最初は結構大変だった。翻訳アプリとジェスチャーのみで銀行口座開設したからね。何も理解できないまますべてが終わっていた。

けど、人が本当に優しいのでなんとかなっている。英語がわからなくても、ジェスチャーとか駆使して全力で助けてくれようとする(ことが多い)。これも東京みたい。

 

アメリカでは、「英語がわからない奴は帰れ」みたいなプレッシャーがあった。

あるよね?英語がわからない=お前が悪い みたいな。別にその態度自体は悪いことではないと思うし、むしろ、まあその国でその国の言語を話すのは当たり前じゃね?くらいに思っていたので、中国ではもうめちゃめちゃな態度を取られるだろうなーと思っていた(英語以上に中国語はマジでわからないので)のだが、来てびっくりという感じ。

 

良い悪いを論じる気はまったく無いけれど、人間の性質としてやっぱり、優しい態度を取られると嬉しいしその国への印象はよくなる。

ということで、観光に絞って言えば、日本において、英語がわからなくても頑張って英語を話して観光客を助けようとする人が多いというのは、かなり大きな財産なのでは無いかと思った。

 

テクノロジー

中国語がわからない人間にとって大きな助けとなるのが、中国のIT。

「頼みたいメニューの読み方がわからず、指差して注文しようにも指差せる位置にメニューがない(頭上とか)」「電話でタクシーを呼ぶのは絶対に無理(だがしかし終電がない)」という人にとって、

外卖(Uber Eatsみたいなやつ)とDidi(Uberのパクリ)は、中国語を話さなくても美味しいものが食べられてタクシーが呼べる救世主…。

あと日本では中国のキャッシュレス決済が話題になっているけど、これはマジでそう。小さい屋台ですら、スマホ決済用のQRコードがある。

キャッシュレス決済は基本的に中国国内の銀行口座を持っていないとアカウントが作れないので、最初まだ銀行口座がなかった時は現金で決済していたのだが、大きいお札しか持っていなかった時とかは、「おつりがない事件」が結構発生した。まあ結局なんとかなるんだけどね。みんな本当に現金を使わないんだなあと感心した。

中国のIT事情に関してはこのブログが面白いです↓

tamakino.hatenablog.com

 

好きなカフェ「一木家 Cafe Chez W」

私はカフェとかバーとか巡るのが好きなのだけど、それはお気に入りを見つけるために巡っているので、いざ見つかると執拗なくらいに通い詰める。バークレーでは毎週末Blue Bottleに行っていた。

 

上海で私がお気に入りゆえに執拗に通いつめたカフェが「一木家 Cafe Chez W」。検索すればすぐ出てくるけど、外観もこじんまりとしていて素敵だし、中には木製の家具や色々な小物があり、見ていて飽きない。お皿やカップも、いちいちユニークな色と形をしている。そしてもちろんコーヒー(とアボカドトースト)が美味しい。

 

オーナーはかなり若い。最初話した時、私は彼のことをバイトだと思っていて、「毎週土曜日のシフトなの?」と聞いたら「いや、僕はここを経営してるから毎日いるよ」と言われてびっくりした。

パリで料理を勉強していたらしく、パリの料理学校のパンフレットやフランス語が書かれたレコードが店の片隅にあったりして面白い。

彼はいつ行っても穏やかで、変わらない姿になんかほっとする。世の中に変わらないものなんてないんだけど、でもそう思わせてくれるのっていいよね。

毎週通ううちに仲良くなって、今では私が日本に帰る日を気にしてくれている。心あたたまる〜。

 

好きなバー「Sober Company」

あともう一つ、あー好きーという場所がSober Company。

 

このお店は3階に分かれていて、1階はカフェ、2階はダイニング、3階はバーという仕組みだ。(1日にこの3つのスペースを制覇すると、4つ目の部屋に入れるらしい。私は入ったことない)

カフェは外に開かれたオープンカフェで、ダイニングもカジュアルなレストラン、バーは10席くらい+テーブル3つという割と標準的なバーの大きさ。バーには立ち席も少しあって、土曜日は混むので雰囲気が少し変わるが、基本的には落ち着いて飲める。

 

カフェではお酒も出しているのだが、さすがバーが上にあるだけあって、出てくるお酒が本当に美味しい。

初めて夜カフェに行った時、Three Chocolatesというものを頼んだら、カカオとオレンジピールの香りが沸き立つのに、飲むとしっかりウィスキー、というカクテルが出て来て感動した。

カフェでこのレベルだから、バーで出てくるお酒はまじでやばい。干支をテーマにしたカクテルシリーズがあるのだが、「蛇」のカクテルをおすすめされて飲んでみたら今までに飲んだお酒で一番好みだった(笑) ウィスキーベースのカクテルで、香りは非常にスモーキーだけど、味は少し甘い。ウィスキーに何を混ぜているのか聞いたけど忘れちゃった。

この前行った時帰りに飲ませてもらったショットも、抹茶が入っていて美味しかった…(これも何がベースなのか聞いたが忘れちゃったけど)。ショットが美味しいなんてある?

 

接客も程よくフレンドリーで素敵だ。

夜カフェに行った時はウェイトレスの女の子が注文を取るついでに話しかけてくれて、読んでいた本とかについても聞いてくれて楽しかった。その時読んでいた本が日本会議についての本だったので説明にめちゃめちゃ困ったけど。

バーでも、基本的にプロフェッショナルな接客なんだけど、時々崩れるのが楽しい。それも含めてプロなんだろうけど。マネージャーが日本人の方で、気づいて声かけてくれるのも楽しいし、この前ずっと接客してくれたバーテンダーの男の人は女遊びしてそうな発言がちょこちょこ出ててウケた。

 

あとは、地味にかかっているBGMがすてき。

バーではジャズが流れているが、ジャズと言ってもピアノとかリラックス系ではなくて、バンドが演奏する少し華やかめなジャズ。この前行った時はJohn ColtraneのA Love Supremeが流れていた。

ダイニングは1度しか行っていないから忘れちゃったけど、カフェでは夜、ファンクが流れている。ファンクだよファンク!

 

政治の話はタブー

上海に来る前に2日間だけ香港に立ち寄ったのだが、香港は香港ですごく良かった。

ていうか私は今の所香港の方が好きだ。あの雑然とした街並みが大好きというのもあるが、一番はフランクに政治の話ができるから。

 

カフェやバーで会った人に何を勉強してるの?と聞かれて、中国政治と答えるとすごくフランクに香港の今の状況(共産党の締め付けが強まっている)について話してくれる。2日間しかいなかったから深い話をしたわけではないが、政治の話がすごく自然に日常会話の中で出てくるのが印象的だった。

私も勉強し始めてから知ったことだけど、香港にはイギリス統治時代からデモの文化が根付いていて、政治に不満があると市民はデモという形で立ち向かう。今回私が香港に行った1日前まで、「香港衆志」という若者が中心の政党が、イタリア広場で大規模な集会を行なっていた。

 

上海はやっぱり違う。本土というのもあるし、人もビジネスをしに集まっている人が多いから、「タブー+興味がない」っていう感じで、上海で会った人と政治の話は基本的にしない。

というか、中国政治を専攻している、って言った瞬間「おお…」みたいな反応をされ気まずくなることが何回かあったので、あまり言わないようにしている。

もちろんもっと仲良くなれば深く切り込めるのかもしれないけど、そうだとしても初対面であちらから政治の話をしてくる香港との違いは印象的だった。

 

これは上海人を批判しているわけではなく、政治体制や上海がビジネス都市であることを考えると当たり前だと思う。

けどそれと私の好き嫌いは別なので、私は香港が好きだなあ!次に時間ができたら香港に長期滞在してみたいなあ、と考えている。