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【中華系映画】面白かった作品8本の感想をまとめる

映画『恋する惑星』にハマって以降、中華系映画をよく観ている。

前に一度Netflixで中華系映画を探した時は、好みじゃないカンフー系の香港映画かラブコメしか出てこなくて結局観なかったのだが、Amazon PrimeとかiTunesのレンタルを使うと幅広いジャンルの映画が出てくることに気づいた。

一気に観すぎて何を観たか忘れがちなので1本ずつ感想をざっくりまとめたいと思います。やっぱり日本語or英語字幕のあるものってなると大陸の映画より香港・台湾の映画の方が見つけやすいので今はそこらへんを中心に観ていますが、いずれ大陸の映画もちゃんと観たいなと思う。

恋する惑星重慶森林)

恋する惑星 (字幕版)

恋する惑星 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

1995年に公開された香港映画。友達に絶対好きだからと勧められたのと、出演している金城武が好きなのでわざわざiTunesでレンタルして観ました。絶対好きだよと言われつつ、まあ自分の好みがわかるのは自分だけだからなあ〜と思っていたのですがマジでドンピシャだった。疑ってごめん。

失恋した警官223号(金城武)は、逃亡中のドラッグ・ディーラーの女(ブリジット・リン)と出会う。続いて、恋人とすれ違いが続く警官663号(トニー・レオン)は、飲食店〈ミッドナイト・エクスプレス〉の店員フェイ(フェイ・ウォン)と出会う。

(引用:Wikipedia

あらすじ簡潔すぎるやろって思うけど、でもだいたいこんな感じ。恋愛映画なのだが、出会って関係を構築する様子を丁寧に描くというより、出会った瞬間のきらめきにフォーカスして、繊細に自由に描いている。

この映画は国際的にも高い評価を得ているが、その理由の一つに、この映画がみんながイメージする「アジアの国際都市・香港」の美しさを最高に昇華させていることにあると思う。金城武が素性不明の女をナンパするときに、言語を広東語・日本語・英語・普通語に次々と切り替えて話しかけるシーンや、夜の街に白人の男がたむろする光景は外国人がイメージする香港に一致するのでは(今は色々変わってる部分があると思うけど)。香港人が思う香港のイメージはわからないので外国人からの視点に限定するが、外国人が憧れる香港が、最高に美しい形で現れている。

 

この映画で特に印象的なのが、女性たちだ。外に開けた自由さがあって、飛びたいところに飛んでいく感じがいい。トニー・レオンの元カノはキャビンアテンダントで、世界中の都市を飛び回るうちにトニーに飽きて振ってしまうのだが、この、女性が外国への抵抗感が少なく、香港の外にぱっと出ていく感じが国際都市としての香港のイメージと重なる(返還直前の移民ブームも影響しているだろう)。ネタバレになるから詳しくは言わないけど、他の登場する女性もその自由さが印象的だ。

対照的に、この映画で出てくる男性2人は相当繊細である。どちらも失恋に傷ついているキャラクターなのだが、傷つき方がちょっと面白い。私は自由な人に惹かれるけど、こっちの繊細さ強烈な魅力を感じる人もいると思う。

 

先ほども言った通り人生の営みを描くのではなく瞬間的なきらめきを捉える映画だから、女性たちももしかしたら数年後には、結婚して子供を抱えて、自由に海外には出なくなっているかもしれない。ただ、そういった社会を映画は見せることはなく、今この瞬間の自由さと繊細さを描いているところが幻想的であり、魅力だと思う。

 

あと個人的にトニーレオンの顔が好きすぎる

インファナル・アフェア(無間道)

トニーレオンが出てるやつ…と探して見つけた映画。普通に日本でも大ヒットしたから知っているかもしれない。Amazon Primeにあります。

1991年、ストリート育ちの青年ラウは香港マフィアに入ってすぐ、その優秀さに目を付けたボスによって警察学校に送り込まれる。一方、警察学校で優秀な成績を収めていた青年ヤンは突然退学となる。彼は、警視に能力を見込まれマフィアへの潜入を命じられたのだった。やがて2人の青年は、それぞれの組織で台頭していく。そして10年後、警察はヤンから大きな麻薬取引の情報を受け取る。しかし警察の包囲網はラウによってマフィア側に筒抜けとなっていた。検挙も取引も失敗に終わったことで、警察、マフィア双方がスパイの存在に気づいてしまうのだった…。

(引用:Wikipedia

私はアクションとかマフィア映画はそんなに好きじゃないのですが、この映画は面白かった。2時間の間、一切だれず、緊張感が一度も途切れないのがすごい。マフィアとかアクション自体が好きな人はめっちゃ名作と思うのでは。ただこの感想の薄さからもわかるように私は他の映画の方が心に残りました。

さらば復讐の狼たちよ(譲子弾飛) 

www.youtube.com

2010年に公開された中国大陸映画!Netflixにあります。これは私的にめっちゃ好みだった。中華民国期(1920年代)が舞台のコメディ映画なのだが、当時・現代の中国社会の風刺が散りばめられている。

1920年軍閥が割拠する乱世の中華民国。金で県知事の地位を買った詐欺師のマー(馬邦徳)は赴任先の地方都市・鵝城(がじょう)へと向かう途中で、指名手配の“アバタのチャン”(張麻子)率いる7人の覆面ギャング集団に襲われる。マーは自らの命を守るために県知事の書記になりすまし、チャンに「鵝城の県知事になれば金儲けできる」と県知事になりすますことを促して、彼らは鵝城に到着する。だが、その街はすでに独裁地主ホアン(黄四郎)に牛耳られていた。ホアンの横暴ぶりは悪党のチャンたちでさえ許せぬほどであり、両者の対立は深まっていった。そしてチャンの舎弟が自害を強いられたことで、ついに両者は全面対決になだれこむ。

普通にただの復讐劇としても面白いしジョークも笑えるのだが、中国の歴史に通じる比喩が色々入っているのでそこらへん詳しい人は特に楽しめそうだと思った。例えば明らかに項羽と劉邦の「鴻門の宴」を意識している会食シーンがあったり、毛沢東を彷彿とさせるセリフがある。公式ホームページにもいくつか取り上げられているので、読んでみて面白そうだなと思った人はぜひ観てみてください。超おすすめ。

ちなみにこの映画のチアン・ウェン監督は、2000年に公開した日本侵略を描いた映画『鬼が来た!』を当局の検閲を通さずに公開したことで映画製作・出演禁止処分を受けており、2007年に公開した『陽もまた昇る』まで監督業ができなかったという過去がある。ムビコレというサイトの監督インタビューでこれに触れていたのだが、

──あなたは『鬼が来た!』(00年)で中国当局から処分を受け、俳優活動を一時やめざるをえませんでした。また、監督としても『陽もまた昇る』(07年)まで5年間、撮ることができませんでした。中国で映画を撮る難しさや利点についてはどう感じていますか?
監督:利点は人が多いこと。映画館も多くて、しかもますます増えている。それ以外はすべてマイナス要因だよ。 

と答えていて笑ってしまった。 それ以外はすべてマイナスってのも面白いけど利点は「人が多いこと(だけ)」って、なんか他にもあるやろwww

十年

Netflixにあった香港映画。2015年に公開された、「香港の10年後を描く」というテーマで5つのショート・ストーリーで構成されたディストピア映画だ。一つ一つのストーリーを別々の5人の監督が撮っている。公開当初は小さい劇場1つのみでも上映だったのが、評判を呼んで上映劇場がどんどん広がったそう。

基本的にどのストーリーも中国共産党の弾圧が強まっているという前提で撮っている。2015年といえば雨傘運動の翌年。制作自体は雨傘運動の前から始まっていたらしいのだが、運動を受けてプロットの変更もいくつかあったらしい。

 

それぞれのストーリーはどんな政治的背景を受けて作られているか、香港研究者の倉田教授が解説している記事があるので貼っておきます。

cinefil.tokyo

私が一番印象に残ったのは3つ目の「方言」だった。広東語と英語のみ話すタクシードライバーの主人公が、徐々に普通語が浸透する香港社会で、徐々に行き場をなくすという話。(現在の香港社会では広東語が共通語。返還後普通語教育が広まっているので普通語も結構通じるらしいが、あくまでメインの言語は広東語)

 

普通語で教育する学校が増えてくる中で、香港人が広東語を守ろうとしているのは知っていた。ただ、私は自分の言語が自分の故郷で使えなくなることへの恐怖感をわかっていなかったんだなあと思った。自分が育ってきた土地にいるはずなのにここに行き場がないとすれば、自分はどこに行き場があるのだろうか?

日本で育っている自分はこの恐怖感というのがいまいち理解できてなかったと思うし、今も理解できていないと思う。ただ、映画のタクシードライバーの目が、諦めとどうしようもないやるせなさに満ちていて、こういう状況にしたくないという香港人の恐怖感が少し見えた気がした。

 

ちなみにNetflixに、民主化運動の学生団体のリーダー・Joshua Wongのドキュメンタリーもある。香港の民主派にも色々あるけど、外国メディアで注目されやすいのはここら辺の勢力だと思う。

www.netflix.com

Netflixにこういうドキュメンタリーを撮らせるあたり、彼らの国際広報力は本当にすごい。私がそもそも香港に興味を持ったのも周庭さんの東大での講演に行ってからだったが、彼女が日本語で発信しているツイッターが多くの日本人にとってのメインのデモ情報を得るソースになってる気がするし。最近のコミケでも香港の民主派側の記録が同人誌として販売されていたのが話題になった。

親中国側の意見も日本語or英語でこれくらい目に入りやすいと私としては助かるけどまあてめえが語学を勉強しろって感じですね

点対点(點對點)

大陸から香港に赴任したばかりの北京語教師のヒロインは、地下鉄の駅で点ばかりの落書きを見つける。点つなぎのような図形に導かれ、香港の街を探索し始める。

(引用:Netflix

これもNetflix。同じ香港映画でも『十年』と全然違う。

はじめの方でいかにも意味深に「点と点をつなぐ」とか言うから、ミステリーかと思ったら全くミステリーではなくほのぼの恋愛映画で拍子抜けした。ほのぼの恋愛映画は私はそんな好きじゃないので微妙だった。

ただ、香港の老舗メディアSouth China Morning Postが「Dot 2 Dot is a touching love letter to Hong Kong」という題のレビューを出しているように(Dot 2 Dotというのは英語版の題名)、昔と今両方の香港の街並みへの愛を感じたし、登場人物がスローライフを(中途半端に)目指しているだけあって、香港の観光地以外の場所がかなり映されるのは興味深い。

香港に馴染みの深い人が見ると色々と思い出すことがあるのかもしれない。

www.scmp.com

あとちょっと意外だったのは、大陸出身で香港に引っ越してきたばかり、広東語ははじめ苦手だったという設定の主人公の女性が、周りの香港人から最初から好感を得ているところだ。

大陸人ということで差別的な言葉を投げかけられるシーンはあるのだが、その言葉をかけてきたのは主人公にいたずら電話をかけてきたどこの誰かもわからない男で、職場の人だったり、生徒ではない。むしろ彼女を大陸から引き抜いてきた語学学校の校長(彼女は語学学校で普通語を教えている設定)に対して、「大陸から優秀な子を引き抜いてくるなんて、さすがやり手だなあ」というセリフがあるように、大陸人や普通語に対してニュートラルな態度の人ばかりだった。

まあ語学学校なので、彼女の周りにいる人は大陸に反感を持っている人は少ないんだろうけど。私は普段香港の政治関係のことばかりに勉強が向いてしまっていて、大陸人に対する香港人差別意識とかに目が向くんだけど、現実はもっと複雑なんだろうなと思った。あとまあこの映画が政治色をがっつり抜いているというのもあるかも。

先に愛した人(誰先愛上他的) 

www.netflix.com

死んだ父親の恋人で保険金受取人にもなっている自由気ままな若い男と、その事実に激怒する気の強い母親の間に挟まれ、思春期の息子は戸惑いを隠せない。

(引用:Netflix

これはもうめちゃめちゃめちゃめちゃよかったです。病気が発覚した父が家庭を捨てて昔付き合っていた男の元に戻ってしまう。しかも自身の保険金の受取人を息子からその恋人に変更していた事実が父の死後に発覚する。というストーリー。

息子、父、母、恋人、という4人の描き方がとても丁寧で、感情移入がしやすかった。優柔不断な父、ヒステリックな母、ちゃらんぽらんな恋人、どこか醒めている息子、という一見わかりやすいキャラクター設定なんだけど、彼らがそれぞれ考えていることや感じたことがゆっくりと明かされていくので、思わず魅入ってしまう。ただ、みんなどこかコミカルなので、頭痛はせず観やすいのがすごい。

 

また、父の昔の恋人が男性だったということでLGBTQの話もがっつり絡んでくる(特に母はホモフォビア全開)。これについてどう書こうか悩んでたけどめちゃ網羅してくれてるブログを見つけたので貼っておきます。

cinemandrake.com

僕らの先にある道(后来的我们)

これはNetflixで観た。前に感想書いたので貼ります。私はぶっちゃけこのハマった時に見過ぎて飽きたwwwけど、今でも好きな映画の1つ。

musicallyrics.hatenablog.com

 

2019年もあと少し!来年も色々考えて良い年にしたいですね。